自然派イヤホンの頂点!JVCのHA-FX1100


 


JVCの「HA-FX1100」は、本当に素晴らしいイヤホンです。
以前の記事ではまだまだ書き足りないので、私的1000%の礼讃はさらに懲りずに続きます。

このイヤホンの最大の魅力は、自然な音色と響きがすることです。

これよりも自然な音のするイヤホンはあるの?

…とさえ真剣に考えてしまうほどです。

自然な音色がするといっても、録音された音源を無機質に再現するだけの「頭デッカチ」とは違います。

HA-FX110の音色や響きは、

「ギターは、こんな音がするよね」

「ドラムって、こんな響き方をするよね」

…というイメージにぴったりくるんです。

楽器本来の音色・響き・艶やかさを再現する「原音再生」

アコースティックギターやピアノ、管楽器はもちろん、ドラムなどの打楽器の響きは感涙モノです。しかし何を隠そう、そのリアルな音色と響きで、他の多くのイヤホンを圧倒するジャンルはヘヴィメタル。

ヘビメタの得意なイヤホンって、本当に稀少種
ですから。

特にミドル〜ハイエンドクラスのイヤホンになるほど、ヘビメタに不向きな機種の割合が高くなります。

巷で「インイヤーモニターの到達点」「超美麗サウンド」と評判の機種でさえ、ヘビメタを再生するとズタボロな音になる。高音域が不自然にギラついてしまったり、中音域〜低音域がガサガサ・スカスカになるケースが後を絶ちません。

特に気になって仕方がないのがシンバルの音です。

ミドル〜ハイエンドクラスのイヤホンは、シンバルの音が「ギラつく」「シャリつく」「耳に刺さる」の三大疾病が悩みの種。シンバルが乱れ打ちにされるヘビメタでは、その傾向に拍車が掛かってしまいます。

それはイングヴェイ・マルムスティーンの「Braveheart」で、コージー・パウエルの叩くハイハット・シンバルのオカズひとつをとっても明らか。下のジャケット画像をクリックすると動画が観れますので、 1:45〜1:57のハイハット・シンバルにご注目を。

※下のジャケット画像をクリックすると「Braveheart」の動画が観れます。


 


このようなハイハット・シンバルの音は、通常は「チャキン」「チィーン」という聴こえ方をします。

2枚のシンバルが貝のように閉じたところを叩いているので、「チャキン」という鈍い音に聴こえるのが常。
「シャ――ン」「キ――ン」などと残響音たっぷりの聴こえ方はしにくいものです。

ところが大抵のミドル〜ハイエンドクラスのイヤホンは「シャ――ン」「キ――ン」と派手に鳴らしてしまいます。細かい残響音までキャッチする高性能が災いして、不自然な聴こえ方になってしまう。

ハイスペックだからこそリアリティに欠けてしまうという、おかしな逆転現象が生じてしまうわけです。
当然、コージー・パウエルの入れるハイハット・シンバルのオカズが…

シャーン シャーン キーン

シャーン シャーン キーン


…と不自然なまでに音の余韻が伸びて聴こえたり、鮮明に鳴り過ぎてしまってメリハリに乏しくなることがあります。せっかくコージーが抑揚をつけて叩いた苦労が台無しになるわけです。

そこでHA-FX1100の出番です。ハイハット・シンバルのオカズが見事なまでに…

チャキン チャキン チィーン!

チャキン チャキン チィーン!


…とメリハリたっぷりに聴こえます。これぞコージー節!閉じたハイハット・シンバルの聴こえ方は、こうでなくっちゃ!

ウッド素材が不要な残響音を吸収することで自然な聴こえと響きを実現します。

それにHA-FX1100は、メタルギターのディストーション・サウンドの聴こえ方が自然です。

ちゃんとギュイ―――ンとした音がする。

このディストーション・サウンドが苦手なイヤホンも多いんですよ。ガサツにガーっと鳴ってしまったり。

それディストーションじゃなくて、ファズだよ

…とツッコミたくなります。
そんなガーガーと鳴ってしまうイヤホンで、クリス・インペリテリの「Venom」を聴くと…

※下のジャケット画像をクリックすると「Venom」の動画が観れます。


 


冒頭のギターのリフからして…

ガガガガ ギャンギャン〜ガサガサガサガサガサガサ!

…と粗暴なだけのギツギツした音色に聴こえてしまう。
キレキレのはずのギターのリフが、まるで工事現場の騒音のようなドギツーい音色に変貌します。

それディストーションじゃなくて、ファズだよ!

そこでまたもやHA-FX1100の出番です。このイヤホンで聴くとギターのリフが…

ズクズク ズンズン〜トゥルルルルルルル!

…とカッコよく聴こえること間違いなし!これぞディストーション・サウンドの真骨頂です。
クリスのギターサウンドは、こうでなくっちゃ!HA-FX1100の中音域が圧倒的にピュアなのがよくわかります。

そもそもヘビメタはただでさえ音がギトギトで、なにかと手数の多くなるジャンルです。
それを細部まで捉え過ぎてしまうミドル〜ハイエンドクラスのイヤホンは、アクの強い音になり過ぎてしまいがち。

その点、HA-FX1100を構成するのは「ウッド」です。音がスッと立ち上がったかと思えば、すぐさまスッと抜けていく。耳ざわりな音をウッドが即座に吸収して封印するので、ギトギトしたサウンドを嫌味のない音色と響きで再生できる。

ウッドが良い意味で足かせになるところがHA-FX1100の強みです。

もちろんヘビメタ向きのミドル〜ハイエンドクラスのイヤホンが、他にないわけではありません。僕の独断と偏見では…

B&O Play Beoplay H3
刺さる一歩手前の明瞭さが絶妙。音量を稼ぎにくいのが残念ですが、そこらのカスタムよりも良音かと。

RHA T20
獰猛に、アグレッシヴに、ガンガン響く!乾いたメタルサウンドを求める方には、ベスト中のベスト。

ATOMIC FLOYD SuperDarts+Remote
パンチ力があり、重厚で、音場がワイド。上位機種のチタンバージョンよりも遥かに自然な音がします。

Oriolus(オリオラス)
万能選手の理想像。BA搭載型とは思えないほどの自然な響きと、温もりあふれる躍動感は驚異的!

VISION EARS V6 X1(Xcontrol版を含む)
どっしりとした重さと、キレキレのレスポンスはヘビメタ向き。シンバルがキンキン鳴るのはご愛嬌。


 
▲HA-FX850の純正ケーブル装着時。自然な音色のまま低音域がスッキリします。


…というわけで、世間的には「騒音」「キワモノ」といわれるヘヴィメタルも、イヤホン選びはナイーヴ。

ヘビメタの轟音を嫌味なく、過度にギラつかせず、それでいながらエネルギュシュに聴かせるイヤホンこそが吉。なによりも自然な音色と響きのするイヤホンが必須です。

そんな自然派サウンドの頂点に君臨するのがHA-FX1100。

とにかく原音再生に対する設計思想が、他の多くのイヤホンと決定的に違うイヤホンです。
トレンドの「細やかさ」「煌びやかさ」「透明感」といった表層的な美しさを目指したのではなく…

楽器本来の自然な聴こえ方を再現してナンボ!

…という深層的なリアルさを追求したイヤホンです。

他のイヤホンが「鮮明な音を」「煌びやかな高音域を」という足し算にばかり躍起になっているのを尻目にHA-FX1100は「不自然な鮮やかさはいらない」「過度の高音域はいらない」との理由で振動吸収性に優れたウッドで制御している。

自然な響きのためなら引き算すら辞さないイヤホンです。

ただしHA-FX1100にも、苦手なものがないわけではありません。
ミキシングやマスタリングにあまり手間隙のかかっていない音源を再生すると、豪快にズッコケる!

お金の掛かっていない音源との相性はサイアクです。

そのような音源では低音域・中音域・高音域がうまく分離されずに、ド派手な低音域の独壇場と化す。
音源制作レベルの低い旧時代のロック作品でも、低音域のブーミーさが強調されがちです。

さらにメタラーとして少し残念なのが…

アイアン・メイデンの作品と相性がよくないことです。

現時点での最新作にして、音源制作にも手抜かりのない「The Book of Souls」でもボワボワした音に聴こえてしまう。彼らのようにウェットな音作りをするアーティストの音源は、苦手なのかもしれません。

そこでちょっと裏技を。

HA-FX850の純正ケーブルに交換してみてください。

低音域が自然に抑制されませんか?さすがに同じウッドシリーズのケーブルだけに「少し音色が変わったかな?」「そういえば低音域がスッキリしたなぁ」と違和感なく変化するのが嬉しい限り。

高音域の見通しのよさはHA-FX1100の純正ケーブルと大差はないので、HA-FX850の純正ケーブルは何気に高品質なのかもしれない…という嬉しい発見がありました。


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