VAN HALEN 「VAN HALEN V」




@Neworld FFire In The Hole
AWithout You GJosephina
BOne I Want HYear To The Day
CFrom Afar IPrimary
DDirty Water Dog  JBallot Or The Bullet
EOnce  KHow Many Say I



これは大傑作です!冗談抜きで!


初期の作品は良かったなぁ…とか、デイヴじゃないと許さない…とか、
いやいやサミーのほうが歌唱力が上だった…とか、
正直ゲイリーじゃビッグVには地味すぎる…とか、
キャッチーな曲が入ってないとヤダ…とか、
そもそも「VAN HALNE V」なんてアルバムあったの?…という

色メガネを投げ捨てて聴いてほしい!

ほら、プログレシッヴ・ロックの大傑作でしょう。

ん?プログレ?

そう、プログレです。この「VAN HALEN V」という作品は、アメリカンロック…などという狭い範疇には、およそ収まりきらないスケールの大きさ。サウンドやプレイの方向性はまるで違うものの、近年のアメリカを代表するプログレバンド「SPOCK'S BEARD」や「IZZ」の作品に通じるものがあります。

とにかくダーク且つブルージーで起伏に富んでます。

そこにエディ・ヴァン・ヘイレンという絶対的な個性が加わるのだから…

緊張感あふれる楽曲がズラリと並んでいる。

そもそも、このヴァン・ヘイレンというバンド。おなじみの「Jump」や「Panama」のように、聴いた瞬間からイエ―――――っとアドレナリンを沸騰させるヒット曲が有名な反面、それとは逆に少しずつ緊張感を高めて盛り上げていくタイプの楽曲も得意なことをご存知ですか?たとえば「Jump」が収録されたアルバムでいえば「Top Jimmy」「I'll Wait」などがそう。どことなくダークで、ブルージーで、起伏があって、まるで今回紹介している「VAN HALEN V」に収録されている楽曲に近い。そう考えれば「ゲイリーの暴走を許したがために、バンド本来の個性を失った」と揶揄されがちな本作も、じつはヴァンヘイレン印でしっかりと作られた作品であると断言します。

さて、ここからは楽曲についての解説です。前途したような緊張感=スリルあふれる楽曲が目白押しです。特に「From Afar」「Dirty Water Dog」「Once」と連続するCDEのナンバーは、僕の中で勝手に「スリル満点3部作」と位置づけちゃいました。「From Afar」なんて、それこそイントロのアルペジオからしてゾクゾクきますよ。冒頭からフェードインで徐々に音量を上げながら"もったいつけている"のも、場の空気をピシッと張り詰めるのに一役買っている。徐々に、少しずつ、曲が開けていき、ゲイリーの声が乗ったところでギターの音が左右へ交互に振られていくなど、音楽的に作られた空間をジリジリと広げていくかのような展開がドラマチックです。PANの振り方も凄く凝ってますね。音が右から…今度は左から…と、左右から気持ちよく畳み掛けてくる。イヤホン等で聴くと、楽しいなんてもんじゃないですよ。ヘヴィなリフも最高に格好いいです。そして続く「Dirty Water Dog」のクールさは後述するとして、さらに次の「Once」では…

「ゲイリー、ありがとう!!」

…と声を大にして叫びたい。彼でなければ、こんな名曲が生まれることは絶対になかったことでしょう。ピアノやSEを主体としたミステリアスな楽曲…とくれば「TOTO」や「AIR SUPPLY」のような透明感あふれるボイスを期待するところですが、いかんせんそこはゲイリー。彼のしゃがれた声質が良い意味でのミスマッチとなり、絶妙なコントラストを描いています。曲の構成自体も"構築美"を極め、エナジーをジリジリと溜めて…溜めて…溜めて…クライマックスで一気にド―――――ン!ヴァンヘイレン史上でも指折りにドラマチックで、プログレッシヴな曲だといっても過言ではありません。ゲイリーのボイスも、本当にソウルフルだもんな〜!サミーのような歌い回しをやや意識しているきらいがあるものの、それでもゲイリーでなければこの味は出せないハズ。歴代の2大フロントマンと比べても、ゲイリーの個性は決して負けていません。

そもそもデイヴにはハナからこの手の曲は期待できないし、サミーなら歌うことはできても、フィーリングが違いすぎる。もちろんデイヴやサミーはゲイリーとは持ち味が違うのだから、比較すること自体がナンセンスですが、それでも比較対象にしたくなるほどゲイリーのアイデンティティは独創的です。ゲイリーを地味だの何だのと言っていたお前が言うなボケェ〜…といわれたら、僕はグゥの音も出ません。本当にすいません(涙目)。こうした緊張感あふれる楽曲群を、一層のこと引き立ててくれるのが…

圧倒的にクリーンなギターサウンド!

…です。本作ではソロパートを除くと、ハードロック然としたハイゲイン・サウンドがあまり使われていません。僕の旧型スカウターによれば、バッキングワークで使用されているトーンの割合は「クリーン系4割」「ハイゲイン系3割」「クランチ系3割」と、かつてないほどクリーン系のトーンが多用されているように感じます。当然、ここまでクリーンな音にすると、ギタープレイの細やかなニュアンスの違いが如実に現れる。一流プレイヤーの真骨頂である「緩急の違い」が明瞭になり、楽曲を一層スリリングに彩ります。

特に「Dirty Water Dog」にはブッ飛びました。バッキングの大半をクリーン系が占めているにも関わらず、本当にアグレッシヴだもんな〜。ハイゲイン系のサウンドにほとんど頼ることなく、ハードロック以外の何者でもない攻撃的な楽曲に仕上げられるセンスは凄いと思います。「Josephina」のアルペジオも綺麗で気持ちいいですね。この曲も「Once」と同様に、ゲイリーのダミ声が絶妙なコントラストになっている。なによりエディのリズム感とフィーリングの素晴らしさが、メチャクチャ際立っていますよ。ギターの一音、一音の違いが、クリーントーンによってクッキリ・ハッキリと聴こえますから。

ただしエディの場合、歪み系の音色もやっぱり凄い!

本作では珍しくハイゲイン系のサウンドを主体とした「Fire In The Hole」を聴くとわかると思いますが、ギョワアァァ〜ンとゴキゲンに歪ませているのに、ギターの1弦から6弦までの音がきっちりと分離されて聴こえてくる。本来は線が細いはずの高音弦の音が、野太い低音弦の音にぜんぜん負けていません。それは「Ballot Or The Bullet」でも同様で、ゴリゴリとしたクランチ・サウンドでありながら、高音弦の音までしっかりと聴こえる。まるでアコースティックギターの音を、ギターアンプのリードチャンネルで歪ませたかのような雰囲気です。

この「クリーンなようで歪んでいる」「歪んでいるようでクリーン」というハイブリッドなギターサウンドは、アルバム「OU812」以降に顕著となりましたが、本作で聴けるそれは「ファイナルアンサー」ともいえる究極形態。もちろんエディ本人にしてみれば、本作の14年後にリリースされた現時点での最新スタジオアルバム「A Different Kind Of Truth」のギターサウンドこそが、現在の最高到達点かもしれません。しかし本作「VAN HALEN V」は、他のどのアルバムよりも…

ぶっっっっっっチギリの高音質!

…なので、ギターサウンドが物凄く心地よく聴こえるんです。本作を聴いた後に最新作「A Different〜」を聴くと、ギターの音がガサガサと濁って聴こえるもんなぁ〜。せっかくエディがギターサウンドを工夫したのに、台無しですよ〜。デイヴの復活に合わせてレトロな音質に味付けしたのかもしれませんが、おかげで「VAN HALEN V」のほうが、僕には優れたギターサウンドに聴こえます。これほどシビアなサウンドプロダクションのなされた作品は、バンド史上で唯一でしょうね。そして最後になりましたが…

エディのプレイはやっぱり凄すぎた!

上手いギタリストは、テキトーに爪弾くだけで凄く格好いいんですよ。技術力だけでは推し量れないリズム感、指先のタッチの緩急、音の強弱のつけ方といった「感性」が、テクニックをあまり意識せずに行う爪弾きプレイに凝縮される。無意識に近い状態で爪弾くからこそ、ギタリストの「素」が出るんです。当然、エディのそれはメチャクチャ格好エエ――っ…と聴き手を圧倒するのが、ヴァンヘイレンとしては異例の約8分を超える大作「Year To The Day」。その爪弾きのようなアルペジオを聴くだけで、鳥肌モンですよぉ〜。

エディの代名詞は、タッピングなどのトリッキー系だけじゃないんです。フィーリングも神懸り的に凄い!ギタリストに必要な要素をすべて持っています。ギターの神様に愛されています。そんな神の子の爪弾きに「これぞエディ」なトリルとアーミングが満載のソロが炸裂するわけだから、8分間がなんと短いこと。エディがバックステージでギターを爪弾いているかのように演出された「Primary」を聴いても、やっぱり上手いなぁ…。シールドコードをプラグインしたときのノイズで始まるアイデアも、面白いですね。

こうして振り返ってみると、じつはヴァンヘイレンらしさが満載の作品です。たとえデイヴやサミーが不在であろうと、キャッチーでハイテンションな楽曲がなかろうと、攻撃的なハイゲインサウンドが少なかろうと、やっぱりヴァンヘイレン印1000%。「この作品は10年、20年先に評価されるものさ…」と語っていた、当時のエディの真意を改めて思い知らされました。もっともエディ本人は、セールス的に振るわなかった本作について、10数年が経過した現在、まったく評価していないかもしれませんけど…。


本作からのライヴ映像はこちらをクリック
エディの爪弾きはライヴでも最高…な「Year To The Day」。ゲイリーの歌唱も熱いっ!!

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