| The Rippingtons「Moonlighting」 |
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アメリカの西海岸系フュージョンの重鎮は、デビュー作から凄かった!最高峰の豪華メンバーとクオリティーで、早々に傑作を生み出してしまったのです。リーダーであるラス・フリ−マンの人脈から、ケニー・G、デヴィッド・ベノワ、グレッグ・カルーカスら大物ミュージシャンが集結。その看板に恥じない素晴らしい楽曲の数々が、ズラリと揃えられております。
正直にカミングアウトしますと、僕はジャズやフュージョンがそれほど好きなわけではありません。テクニックやアドリブ能力の凄さは分かるのですが、僕のアタマのメモリではほとんど曲を覚えられないからです。ただのBGMにしか聴こえなかったり、インプロビゼーションのソロはひたすら眠くなる。Tスクウェアやカシオペアのキャッチーな曲でないと楽しめません。
そんな素人の僕でも夢中で楽しめたのが、リッピントンズの1stアルバム「Moonlighting」でした。とにかくメロディアスで覚えやすく、楽曲の雰囲気が心の中で映像化されていくんですよ。ただ聴いているだけで、ウエストコーストに連れて行ってくれる。子供の頃、世界地図を開いては、想像力の中で旅をした気分になった…そんな記憶を追体験できるアルバムです。
まずオープニングナンバーの@で、夜の西海岸へようこそ。日が暮れた海岸線、カーステからは陽気な音楽、波間に浮かぶムーンライト…というシチュエーションが、目の前に浮かんでくるかのようです。軽いタッチのサックスが楽しげな雰囲気を醸し出し、キーボードがシーサイドの涼風となり、しっとりとしたギターソロが渚の切なさを投影。これ以上ないほど掴みは完璧です。
この順風満帆な船出から、サラリとした展開へと巡航するのがA。色気のあるケニー・Gのサックスと、小気味のよいベースのリズムが巧妙に絡んできます。軽快な曲調の中にあって、中間部にはギターシンセのソロプレイも。良い意味で肩の力が抜けていながら、適度な起伏もあるんですよ。アルバムの流れを円滑にする佳曲です。
@で聴き手のハートをキャッチして、Aでその雰囲気を軽快に流した後は、いよいよ青い海の西海岸へとトリップさせてくれるB。フリーマンの奏でる涼やかなアコースティックギターに、ハイハットとパーカッションのコンビネーションが絶妙!ベノワのピアノも絡んできて、素晴らしいアンサンブルを魅せてくれます。爽やかでお洒落な曲調に、気分は完全にリゾートです。
そしていよいよCが、僕の大・大・大好きな「Dreams」がやってきます。幻想的なシンセサウンドで始まる展開からして、ドラマチックな予感がビンビンしますね。この期待にこれまた大物のデイヴ・コーズ(当時はデヴィッド・コーズとクレジットされていた)が、ウインドサックスを駆使して見事に応えてくれますよ。やや人工的で丸みのあるサウンドが、フンワリとやさしく包み込んでくれる。シンセ音源を使用したサックスで、ここまで情感的に聴かせる表現力は流石だと思います。そこにベノワの清涼なピアノが、まるで打ち水のように畳み掛けてくるわけですよ。Tスクウェアが好きな僕には、ストライクゾーンの真ん中。キャッチーでドラマチックなフュージョン…という意味において、まぎれもない名曲です。
それにしてもBCと、立て続けに良い仕事をしているベノワ様。その涼しげなピアノがDの「Mirage」で真価を発揮します。雷鳴とともに西海岸にスコールが降り、暑く乾いた大地が少しずつ冷やされて潤っていく。そんな光景を再現するかのようなピアノの調べが、アドリブのソロを交えてしっとりと展開されていきます。なんといってもピアノの音色が素晴らしいですね。涼風が吹き抜けていくかのような音色は、幻想的な世界観にぴったり。本当にMirage=蜃気楼が見えてきそうな雰囲気で、曲の後半ではブランドン・フィールズのアルトサックスが盛り上げてくれますよ。この曲もCに続いて大好きなナンバーです。
続くEの「Calypso Cafe」では一転してルーズな雰囲気に。CDとシリアスな曲が続いたので、ここに遊び心のある曲がくると少しホッとしますね。カラッと暑い日に、カフェで冷たいカリプソコーヒーを飲んでひと息ついて…というフィーリングでしょうか。カフェのまったりとした空気が伝わってくる曲ですね。Dと同様、フィールズのサックスが大活躍します。
そしてFでは久々にケニーのサックスが登場。ややロックテイストの曲調にあって、透明感のある伸びやかなサックスの音色が冴え渡ります。決して派手なプレイはしないけれど、本当に艶やかで耳に残る音色ですね。ジャジーなEに対して、ロック調のFと、バラエティー豊かな展開で飽きさせません。
いよいよラストナンバーのGです。名曲揃いのアルバムだから、ここまでくるのがとにかく早い。完全に時間の流れを忘れさせてくれます。デイヴのウインドサックスによる切なげなメロディーに、フリーマンのアコースティックギターでホロリときて、グレッグのピアノソロのやさしい音色に酔いしれて…。これまたTスクウェアが好きな人にはツボだと思います。真夜中に部屋の明かりを消して、センチメンタルな気分に浸りながら聴きたいですね。名盤のラストにふさわしい、ロマンチックな曲になっています。
なによりインスト主体のフュージョンというジャンルで、ここまで印象的な曲を作り出すこと自体が凄い。それもアルバム全体を通してですから、そのセンスたるや並大抵のものではありません。アルバムの中に1曲や2曲は「オッ」と思うことはあっても、全曲となると激レア。そのような作品に出会えたことは、本当に幸せなことだと思います。ジャズやフュージョンが苦手な僕ですら感動したThe
Rippingtonsの「Moonlighting」。捨て曲なし…などという次元の話ではありません!すべての曲がベストです。
◇特上お勧め曲:CDG ◇お勧め曲:その他のすべて
本作からのライヴ映像はこちらをクリック
Aの「She Likes to Watch」とBの「Angela」が続けて演奏されています。ライヴのクオリティーも凄いですよ。 |
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