| Yngwie Malmsteen「Magnum Opus」 |
| @Vengeance |
FVoodoo |
| ANo Love Lost |
GCross The Line |
| BTomorrow's Gone |
HTime Will Tell |
| CThe Only One |
IFire In The Sky |
| DI'd Die Without You |
JAmberdawn |
| EOverture 1622 |
KCantabile |
名盤ですよ、これ。
なぜ過小評価されているのか理解できない!
巷で名盤との誉れ高き前作「The Seventh Sign」に続くリリース。それも同じシンガーであるが故に「こりゃ前作の劣化コピーだな」とか「イングヴェイ作品で同じシンガーが2作続くと駄作になる」などと散々な言われようです。んんんん、ちょっと待ったぁ〜!!!
たしかに「The Seventh Sign」と、アルバムの構成はクリソツですよ。疾走曲に始まり、中盤にバラードとインストがきて、ミドルテンポの曲やら、シタールやらが飛び出して、終盤にまた疾走曲がきて…という展開は、見事に前作そのまんま。しかし、マイク・ヴェセーラが、良い意味で馴染んできたことから…
前作よりも圧倒的にアグレッシヴです!
もう一発目の「Vengeance」から、テンションMAXですよ。ワウでギャンギャンと唸りまくるカッチョいいリフに、キャッチーな歌メロが颯爽と乗ってくる展開が気分上がるわー。爽やかなSEをバックにイケイケに盛り上がったところに「ヴェーーーーーーーーーン
ジャーーンス」とコブシが効きまくったサビは最高ですよ。まさにパワフル&メロディアスの極みです。
そこにきて中盤のソロなどは、アタマから「タラリラ タラリラ タラリラ タラリラ…」とお約束のペダルノートが突き刺さる!もはや「超」が100個くらいつくほどベッタベタな展開ですが、この水戸黄門ばりの王道パターンがなんと素晴らしいことか。その後の速弾きなんて、速いなんてもんじゃないし。…って、スピード自体は当時でも決して珍しいレベルではありませんが、絶好調のイングヴェイの速弾きには、有無を言わせぬ気迫が込められてますからね。全盛期の藤川球児の火の玉ストレートの如く、スピード以上のキレと凄みを感じ取ることができます。
そこから間髪を入れずに畳み掛ける「No Love Lost」も、これまた熱い!熱すぎる!僕はこの曲、凄く好きですよ。ゴリゴリと押して押しまくるラウドなリフと、マイクのソリッドなダミ声がドンピシャ!前作はマイクが初参加だったことから、どことなく手探りで綺麗にまとめた印象がありましたが、本作のイングヴェイとマイクの絡みはスパイスが強烈に効きまくっています。オープニングを飾る「Vengeance」と同様に、SEを駆使してゴキゲンに盛り上げていく展開にも胸が躍ります。
それにこの頃の作品のセカンドナンバーは、イングヴェイのジミヘン趣味が(良くも悪くも)顔をのぞかせるのが規定路線だったものから、本作では思い切って曲調を変えてきましたね。ワウの使用と、ソロのフレージングに、ジミヘンごっこの名残はみられるものの、今回はメタル色の濃い楽曲にチェンジ。それもここまでグルーヴ感を全面的に打ち出した楽曲は、イングヴェイの作品ではレアな類かもしれません。
それもこれもマイクのガッツあふれる歌唱のおかげです!
マイクは力強いダミ声でキビキビと歌うから、歌唱そのものに躍動感があるんですよ。こういうシンガーがいると、ついグルーヴ感のある曲を作りたくなるんだろうなぁ〜。それに力を込めて高らかに歌い上げるところと、ルーズに流すところの緩急の使い方が凄く上手い。メリハリの利いた歌い回しが「Tomorrow's Gone」や、静と動を巧みに使い分ける「Time Will Tell」にバシッとキマるんですよ。それこそ「Cross The Line」なんて、最高のハマり役じゃないですか。過去にラウドネスの「Soldier Of Fortune」のシンガーに抜擢された理由がよくわかる。マイクの声質や歌い方は、この手の曲調にドンピシャですもん。声そのものに、適度なクセと色気があるから…
地味な曲でも凄く格好よく聴こえる!
ジワジワと好きになれる!
楽曲のもつ「スルメ」な魅力を掘り起こしてくれるわけですよ、マイク・ヴェセーラというシンガーは。僕は正直なところ「Fire In The Sky」や「The Only One」といった曲には、あまり愛着がないんです。たしかに格好いい曲だとは思いますが、あまりにもわかりやすくて一本調子なところが、すぐに飽きてしまった。それよりも最初はピンとこなかった曲に、自分なりの楽しみ方を見つけたときのほうが嬉しいです。なによりマイクは細かいところまで表情豊かに歌えるから、スローテンポやミドルテンポの地味な曲でも飽きがこない。噛めば噛むほど味が出ます。
…とは言ったもののバラードは一聴しただけで名曲でした!
本作に収録された「I'd Die Without You」なんて、そりゃもう文句なしのバラードですよ。荘厳なイントロが流れた時点で「Forever One」を超える名曲だと確信しました。マイクの歌い出しにもビックリしたな〜。ただの「歌」というよりも「子守唄」に近いのだから。こんなに慈悲深い歌い方ができるなんて!アルペジオの旋律美といい、悲哀に満ちたソロプレイといい、付け入る隙がありません。
イングヴェイの数あるバラードの中でも、このクオリティの高さは出色でしょう。過去作品も含めると他にも「Dreaming」「Save Our Love」「Like An Angel」といった名曲もありますが、それ以上に素晴らしい楽曲だと思う。僕はマーク・ボールズの歌う「Miracle Of Life」というバラードも大好きですが、あの曲はギターの音色・録音・編集の悪さがモロに目立ちますからね。総合的に「I'd Die Without You」が一番好きです。そしてもうひとつ、僕にとって本作で「一番」のハイライトとなる曲といえば…
ドラマチックな「Voodoo」です。
ディレイとハーモナイザーを効かせたイントロからして、楽曲に対する期待値がウナギ昇りですよ。ギターのヴォリュームを上下させて「フェードイン」「フェードアウト」を繰り返す、あのフワフワとしたサウンドがゾクゾクする。曲の冒頭から、幻想的な雰囲気をプンプンと漂わせてくれます。ザクザクと刻まれる鋭角的なリフと、アルペジオのセクションが交互に押し寄せてくるAメロなどは、ミステリアスな「Voodoo」というテーマにピッタリですね。サビが対位法を駆使したバロックテイストで、劇的に盛り上がるところもたまりません!マイクの熱の入った歌いっぷりも、堂に入っています。きわめつけは後半のギターソロ。これが「壮絶」としかいいようがないくらいに凄まじい!低音弦からトップスピードで一気に上昇していくところなんて、鳥肌モンですよ。激烈な高速プレイの中に、ストーリー性さえも醸し出しているところがカッチョいい。ただ速いだけがウリのギタリストとは、表現者としての役者があまりにも違います。
正直に白状しますと、トップスピードでのイングヴェイは、けっこう雑に弾いてたりします。それこそ細かい音の1つや2つは、平然とスッ飛ばして弾いていますが、激烈なトーンと勢いで格好よく聴こえてしまうところが本当に凄い!決して正確なプレイに徹しているわけではないのに、そのほうが還って魅力的に聴こえるのだから恐ろしいものです。魂の込められたプレイは、時として「理屈」さえも覆すものですね。ピッチャーの気合いが込められた球なら、ストライクゾーンから少し外れても「ストライ〜ク」とコールしてもらえることがあるのと同じように。「Voodoo」のソロプレイは、そんなイングヴェイ節のオンパレードです。
そして本作を語る上で、心の底から叫ばずにはいられないのが…
クリス・タンガリーディスに祝福あれ!
クリスの素晴らしいプロデュースなくして、このハイクオリティはありえない。楽曲の充実度、作品全体のバランス、音質や音抜けの良さ、完成度のすべてがエクセレント。イングヴェイお得意のセルフプロデュースでは、絶っっっっっ対に真似できません。特にアルバムの終盤を彩る「Time Will Tell」を、イヤホンやヘッドホンで聴いてみてください。シタールの音色の散りばめられ方ひとつとっても、凄いですよ。空間表現の技量が、ハンパじゃなく上手い。僕の中では隠れた名曲として、少なくとも「Fire In The Sky」の100倍は再生したと思います。しかも驚くべきことに、ギターのバッキングに無駄なアドリブが一切ない。あくまでもアンサンブルの一部として、完璧に調和しているのは奇跡のようなものです。しつこいようですが、イングヴェイお得意のセルフプロデュースでは、絶っっっっっ対に無理。ここまで「楽曲至上主義」を貫くなんて、イングヴェイ一人ではまず不可能でしょう。
さらにもうひとつ、この作品には僕にとっての「一番」があります。まず同意される方は皆無かと思いますが、イングヴェイのインストナンバーの中で…
僕は「Amberdawn」が一番だと思っています。
厳密に言うと「Crying」との同率首位。何が良いのかって、メロディーがとにかくイイッ!ただ綺麗なだけでなく、懐が深く、雄大で、慈悲深い。あんなボテボテの外見と太い指から、こんなに穏やかで繊細な曲が生まれること自体が信じられない。芸術の魔性というか、罪深さってやつですね。派手な速弾きはないけれど、フレーズごとに絶妙なタメが利いているし、音色の表情が豊かで感性に訴えかけてくる魅力がある。12フレット上に軽く触れて、ハーモニクスを効かせるところなんてたまらんですよ!
サステインがクオ―――――――――――――――アァ―――ン!!!
あーっ、もうダメ!タッピング・ハーモニクス万歳!シンプルなアイデアながら、最高にシビれます。こんなに素晴らしい曲だからこそ、別れた前妻の名がタイトルになっているのが残念でなりません。前のカミさんに捧げた曲なんて、二度とライブで日の目を見ることはないでしょうから。現在は肖像権の問題からか「Dawn」という曲名に改められましたが、いずれにせよ「黒歴史」として封印されたことが残念です。
この宝石のようなインスト・ナンバーで本編は終了。ヴィヴァルディのフルート協奏曲<ごしきひわ>の第2楽章をモチーフにした、日本盤用のボーナストラック「Cantabile」でグランドフィナーレを迎えます。そこでいつも日本盤のCDをお買い求めの方なら、本作が前作よりも決定的に勝っている点に気づかされることでしょう。それは…
ボーナストラックのクオリティが桁違い!
これが本作の素晴らしいところです。なんせ前作の日本盤に収録されていたボーナストラックなんて、本当に酷かったもんなぁ〜。イングヴェイのド・ヘ・タ・ク・ソ(←強調)なリードヴォーカルのおかげで、本編の感動をブチ壊し!せっかくの会席料理を、ドクターペッパーで締めるようなもんです。正気の沙汰とは思えない。これがウリ・ジョン・ロート仙人くらい「ネタ」として面白みのある音痴だったら、まだ笑って済ませることはできますよ。ウリ仙人の場合、その凄みあふれるギタープレイと、フニャチンすぎる歌のギャップに、笑いのシズルが詰まってますから。でもイングヴェイの下手糞な歌は、ウリ仙人とそれと違って愛せない。単に耳障りで、大迷惑なだけでしかありません。無駄な駄曲のせいでアルバムの品位を損ねるくらいなら、いっそのことボーナストラックなんて入れてくれないほうが有り難いってもんです。
その点、本作はヴィヴァルディの清らかな調べで終了。イングヴェイのリードヴォーカルと、ヴィヴァルディのメロディーでは、どちらが有終の美を飾るのにふさわしいか―――。もはや考えるまでもないですね。やっぱり会席料理は、新鮮な水菓子でサラッと締めたいものです。前作の反省点をしっかりと検証して次回作に生かすという、イングヴェイらしからぬ進化を遂げた稀少な作品といえるでしょう。…といっても、ボーナストラックの選定に関しては、マネージャーやレコード会社の判断かもしれませんが…(汗) |
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