DOKKEN 「BEAST FROM THE EAST」 短縮版


 


@Unchain The Night GHeaven Sent
ATooth And Nail HIt's Not Love
BDream Warriors IAlone Again
CKiss Of Death JJust God Lucky
DWhen Heaven Comes Down KBreaking The Chains
EInto The Fire LIn My Dreams
Fギターソロ〜Mr. Scary  MWalk Away(ボーナストラック)




スタジオ盤よりも圧倒的にアグレッシヴで…

スタジオ盤よりも遥かに格好よくて…

スタジオ盤よりも桁外れにエキサイティング!


1988年にNHKホールで行われた、来日公演の模様を編集したライヴ盤。この作品のカッコよさに慣れてしまうと、スタジオ盤に収録されている原曲なんて、ショボ過ぎて聴く気が起きません。一応、僕は第一期ドッケンのスタジオ盤アルバムをすべて揃えていますが、ここ20年以上も再生した記憶がほとんどないくらい。今回ご紹介する「Beast From The East」が、あまりにも素晴らしい名演だからです。

特にCD1枚に14曲を無理やり詰め込んだ短縮版がおすすめ!

じつはこのライヴ作品、フルレンスの17曲をCD2枚に収めた「コンプリート版」もリリースされていますが、僕はポンポンポーンとテンポよく進む短縮版のほうが好き。なにより曲順の並びが絶妙なんですよ。ライヴ盤の曲順をイジるなんてけしからん…という方でなければ、短縮版のほうが楽しく聴けると思います。

そんな本作がスタジオ盤を遥かに上回るほど素晴らしい出来栄えなのは、やはりジョージ・リンチのライヴパフォーマーとしての圧倒的なセンスと演奏力に尽きると思います。

まず第一にギターサウンドが格好いい!

もうオープニングの「Unchain The Night」の音色からして震えました。イントロのアルペジオで「くるぞ!くるぞ!」とジラされた後に、ギュワァィィィィ―――――ンとくるディストーションの第一声からシビれた。なんてヘヴェイネスな音なんだ!そこにきてバッキングの音抜けと歯切れも良いんだから、鬼に金棒ですよ。ライヴにおけるジョージのディストーションサウンドは、ギュワァァァァォォオン…とウネりまくるのが最大のポイント。まさに「スクリーミング・デーモン」を地で行く、断末魔の如しサウンドです。

そして第二にギターソロがキレまくり!

特に「Tooth And Nail」のソロ、コイツはもう鬼です!まずタッピングがきて、その次にタッピングがきて、またまたタッピングがきて…という展開ですが、こんなにタッピングのトリルが続くと、普通は単調でツマらなくなるじゃないですか。実際、スタジオ盤のソロなんて、途中から飽きてきちゃうし…。でも本作に収められた同曲のソロは、スタジオ盤とは次元が違う!トリルは圧倒的にキレるわ、右手スクラッチの上下移動がプラスされているわで、脳味噌にズガ――ンと響きますよ。タッピングの連続なのに全然ダレない…というか、ひたすら「スッゲー」「カッケー」と連呼させられること確実。ソロ後半の、ドラマチックな展開も素晴らしいです。スタジオ盤はおろか、インターネット上にアップロードされている全ての「Tooth And Nail」の音源を、軽く蹴散らす超ハイクオリティ。そのブッッッチギリの完成度に、頭がクラクラします。

さらに第三の理由としてアレンジとアドリブがイカす!

その際たるものが「Just God Lucky」です。イントロのリードワークからして、凄くカッチョよくアレンジされている。しかも曲の随所に"トゥルルルル〜"とか"タラリラ タラリラ"なんてオカズが入っているものだから、これがまた楽曲の躍動感をグーンと引き立ててくれるんですよ。エンディングのアドリブプレイにしても、思わずグランドフィナーレかと勘違いさせられてしまうくらいの格好よさ。それにアレンジの良さといえば「It's Not Love」も凄いんですよ。バッキング自体がよりリズミカルにアレンジされている上に、ギターがオーバーダビングされている原曲よりも存在感バッチリなところがビックリ仰天!ギター1本でよくぞここまで…と、口をパクパクせざるを得ない、素晴らしい出来栄えです。

そんなジョージのギターワークと対を成すのが、ドン・ドッケンのリードヴォーカル。

主役は俺だぞ!ジョージなんぞに負けん!

…という執念とも怨念ともいうべき、ドンの情念がビシバシと伝わってきますよ。宿敵ジョージに情け容赦なくガンガン攻められて、ある種のスイッチが入ってしまったのか…

ドンvsジョージの壮絶バトルが勃発します。

もう「Kiss Of Death」なんて、湿度の高い日の高圧送電ばりにバチバチいってますよ。パワーコードで押しまくるジョージのギタープレイに対して「俺よりも目立つなバカヤロウ」とばかりに、ドンの甲高い声が響くこと響くこと。すかさずジョージも「やかましいわボケェ」と言わんばかりに気合い全開!ピッキングハーモニクスの力強さといい、中盤のソロプレイといい、終盤のアドリブプレイといいキレッキレです。

そもそもこの2人、バンドの結成直後からペシャリそうになるほどソリが合わない。そこから数年分もの鬱憤が溜まりに溜まった末の、このライヴですからね。

「空中分解の寸前」という極限の緊張感が、作品全体をスリリングに支配していることは想像に難くありません。

この危うい核融合が「ホンのひととき」でも良い方向にいくと、不思議と珠玉の名演が生まれることを実証したのが「Alone Again」です。スタジオ盤には収録されていない挿入部分を耳にするだけで、その悲哀に満ちたアルペジオと歌唱にゾクゾクする。「アァ――イクドゥン、スタァ〜ンドゥ!ザァ…プレェェ〜ェェェイン」とくる節なんて、身悶えしちゃうくらいに狂わしいもんなぁ。曲の本題に入るとドンのソウルフルな歌いっぷりと、バラードを壊さないギリギリのところで攻めるジョージとのマッチアップは最高です。

それは映画・エルム街の悪夢3でおなじみの「Dream Warriors」も同じ。2人の息がピッタリ合っているかのような、そのコンビネーションの良さにビックリしますよ。忌み嫌い合っているはずの2人の掛け合いが、信じられないくらいに素晴らしい。原曲よりも音程を下げたのが功を奏して、ドンの声が余裕をもって伸びること伸びること。ジョージのギターも、凄まじい切れ味だもんな〜。ソロパートに至っては、スタジオ盤よりも100000000000000000000倍も格好よくアレンジされています。

そんなドンとジョージの見えないやり取りこそが…

本作を名演たらしめる最大のエネルギー源!

時には激しく火花を散らし、時には驚くべきマリアージュを魅せて、スタジオ盤を遥かに凌ぐマジックを本作にもたらしている。

そう考えると陰のMVPはミック・ブラウンかもしれません。

ドンとジョージの熱気にあてられて、ドラムスのミックが完全に暴走特急ですからね。ラットのボビー・ブロッツァーと同様、お世辞にもテクニシャンといえるような技術力は持ち合わせていないので、バタバタとした忙しい音になる。それこそロールなんて、ベチャベチャに潰れちゃってますもんね。でもそのドタバタ感が還って"疾走感"を演出する結果となり、アグレッシヴに聴こえてしまうから面白い。ドンとジョージの確執が生むエナジーこそが、本作を名盤たらしめる原動力だとすれば、その勢いをダイレクトに反映させたミック・ブラウンの手腕(?)こそが、陰の大仕事といえるかもしれません。正直、ドラマーとしての技量はかなりビミョ〜だし、もう少しオカズ等を工夫して叩いてほしいな…と思うことが多々ありますが(あり過ぎるくらいですw)、不思議とドッケンにはフィットしています。

そして敢闘賞はベースのジェフ・ピルソンに決まり。

決して特別なプレイをするベーシストではないけれど、暴走気味な3人を尻目にクレバーなプレイに徹している。彼がしっかりとリズムとグルーブを保っているからこそ、他のメンバーが前のめりに突っ込んでもズッコけずに済むわけです。「In My Dreams」を筆頭とする美声のコーラスワークも、随所に素晴らしい。ヴァンヘイレンにおけるマイケル・アンソニーのような役割を果たす、縁の下の力持ちです。

残念ながら本作の発表後に、ドンの脱退を機に活動を停止してしまったドッケン。その後に再生・離脱を繰り返してきた彼ら自身も、未だに本作に並ぶケミストリーを起こすまでには至っていません。本家本元の彼らでさえ再現不可能ともいえる、まさに唯一無二の名演「Beast From The East」。その輝きはリリースからおよそ30年を経た現在でも、そして未来永劫まで、朽ちることはありません。



Copyright (C) Niyagotch All rights reserved.