ANGRA 「AURORA CONSURGENS」


 


@The Course Of Nature FSo Near So Far
AThe Voice Commanding You GPassing By
BEgo Painted Gray HScream your Heart Out
CBreaking Ties IAbandoned Fate
DSalvation : Suicide JOut Of This World
EWindow To Nowhere




音楽の多様性といい、楽曲の充実度といい…

これ、傑作中の、傑作ですよ!

地味な作品だなんて、トンデモナーイ。

オープニングの「The Course Of Nature」のイントロからして、滅茶苦茶カッチョいいもん。SEをバックに、マラカスやらコンゴやらの音がシャカシャカと響いてきた瞬間に、まるで静寂な密林に朝日が差し込んでいくようなヴィジュアルが脳裏に浮かぶ。そこにビリンバウ(…という名前の民族楽器だそうな)をジャカジャカとかき鳴らしながら、ギターのヘヴィなリフが導き出されるセンスは本当に凄い!

そして本題に入ろうものなら、ディレイを効かせた「ガッガッガッ ガッガッガッ」という骨太なギターサウンドが、これまたクール。まわりに細かく散りばめられた、無数のSE(効果音)も絶妙です。空間性あふれる、幻想世界を醸し出してくれるのですから。さらに中盤以降は曲の展開がガラリとチェンジして、前半までの雰囲気とは異なるギターソロになだれ込む展開も面白い。まるで彼ら自身が…

俺達はネオクラ系パワーメタルだけじゃないぞ!

多彩なドラマと意外性も楽しんでくれよ。

民族音楽のエッセンスも入れちゃうぜ!

…と強烈に自己主張しているかのよう。サードアルバム「Fire Works」の再来を宣言するかのように。
えっ?「Fire Works」の再来だと、分かりやすい疾走曲が無いんじゃないの…と心配な方も、ご安心を。

本作屈指のスピードチューン「The Voice Commanding You」がドッカ――ンと爆発しますので、ぜひご期待あれ。

開始0.5秒でガッツポーズすること確実です。

このイントロを聴いて興奮しないような感性の方とは、正直お付き合いしたくないです(笑)。メタルではお約束の「ダカダカ ダカダカ ダカダカ ダカダカ」というロールをファンファーレに、アクセル・プリースターのドラムスが大爆走!フェリペ・アンドレオーリのベースも、ブリンブリンと格好よく唸ってます。こうなってしまったら、もう誰にも止められない…。それにしてもギターのリフ、かなりテクニカルじゃないですか?普通、この手の疾走曲はどうしても退屈なリフになりがちなのに、この曲のリフときたらとにかく忙しい。それも無駄な音を一切出さないミュートの上手さは、もはや笑うしかありません。

…と思いきやさらに上には上があった!

同じくスピードチューンの「Salvation : Suicide」のリフは、もっと凄いですよ。

とにかく忙しいなんてモンじゃない。リフだけで生半可な速弾きプレイの100000000000倍は難しいのではないでしょうか。この水準でリズミカル&クリーンに弾けるスキルがあるというだけでも、ギタリストとして一財産になる…と言っても過言じゃありません(僕には無理)。キコ・ルーレイロのAtoZがギッチリ詰まったナンバーです。特にブリッジミュートをしながら、ガシガシと畳み掛けてくるところなんて悶絶モノ!その突進力というか、トルク感はハンパじゃありません。それも次から次へとめまぐるしく展開が変わっていく中で、ギターの音がすべてハッキリと聴こえるのは本当に凄いですよ。その音抜けの良さはバッキングのみならず、中盤のソロプレイでもキレッキレ!レガートとタッピングを交えた流麗なフレージングの一音一音まで、クッキリと際立っています。ラファエルには申し訳ないけれど、やっぱりキコは天才すぎる。

いやいや、そういうテクニカルな一面も凄いけれど、ANGRAといえばメタル然とした構築美に尽きるでしょ…という方には、問答無用で「Window To Nowhere」がお勧め。

まさに鉄壁ですよ、鉄壁。

弾むようなリフを弾こうと、ギターでハモろうと(スタジオ盤ではキコが一人でハモッている可能性もありますが)、鋼鉄の如くコンビネーション。リフとスネアがシンクロするところが多いなど、ギターとリズム隊の絡み具合が絶妙です。それにアイアイ・メイデンよろしく、時には3本のギターがビタッとくるのも気持ちいい。パワフルなリフをバックに、ギターでハモるところなんて、メイデンのお得意パターンですから。こういう王道パターンも好きなんだなぁ…と思うと、なんだか微笑ましくなっちゃいます。

ただ不思議なことに、これだけ素晴らしい作品でありながら…

肝心な何かが足りないような気もする。

この違和感の正体は、一体何だろう?
ギターワークは完璧だし、アキレスとフェリペのリズムセクションも最高峰。疾走チューンでも単調にならずに格好よく仕上がっているのは、リズム隊の功績が大きいです。…となると、残すは…

そう、エドゥの歌唱が絶不調なのです。

どうやら声帯を激しく傷めたらしく、声そのものに艶と張りがありません。声域も恐ろしく狭まっており、歌メロに違和感がアリアリ。「なんでそのリフや展開で、その歌メロなの?」とクエスチョンマークが飛び交います。まるでライヴでヴォーカリストの声がヘタレてきたときに、歌メロを無理やり転調して、ごまかしながら歌っているときと同じ違和感を覚えるほど。「The Voice Commanding You」の歌い出しなんて、完全にズッコケちゃってます。

でも、調子を落としてしまったのは、エドゥが悪いわけではありません。ライヴのたびにアンドレ時代の曲も含めて、ニワトリの首を絞めたような声で連日歌わされれば、喉を潰してしまうのも仕方がないことです。

ただし、そんな絶不調でも「エドゥの底力」の片鱗は垣間見せてくれますよ。

特に「Ego Painted Gray」「Breaking Ties」「Passing By」といった、「陰」と「陽」の要素を巧みに組み合わせた楽曲への対応力は見事ですね。ウェットなアルペジオのセクションから、ドーンと突き抜けるセクションへと変化していく難しい展開に対して、違和感を極力抑えながら歌い上げている。おかげで3曲揃って「隠れた名曲」といえる出来栄えに仕上がりました。

また「Scream Your Heart Out」に至っては、ほぼ違和感なし…どころか、むしろエドゥの歌が光り輝いている。全盛期のような…とまではいかないまでも、どの声域でも彼らしい力強さがキラリ。技アリとしか言いようのない小気味いいギターのリフに乗って、歌メロの格好よさが一段と引き立てられています。他の曲では歌いづらそうにしている「低音域」も、このナンバーでは情感たっぷりに聴かせてくれます。

そんなエドゥの奮闘ぶりは、本作最大のハイライトである「So Near So Far」でも存分に冴え渡っている。なんせこの曲、起伏に富んでいるなんてモンじゃないですからね。イントロからエキゾチックに怪しく響くシタール。その"うねる音"を投影するかのように、空間系のエフェクトを効かせたギターのアルペジオ。そして職人芸ともいえるスキルを要するリズムワーク。さらに情感たっぷりのソロプレイに、メランコリックなアコースティックギターなど、際限の無いドラマが複雑に絡まる難曲を、多彩な歌唱でリードする…という大役を果たしているのだから、エドゥの自力はやっぱり凄い!

もしエドゥが本調子であればメタル史に残る金字塔となっていたかもしれない、底知れぬポテンシャルを秘めた作品です。世紀のコンセプトアルバムと称えられた前作「Temple Of Shadows」と比較されて地味に思われがちですが、聴き込むほどに輝きを増す、超スルメ作品といえるでしょう。

また本作の嬉しい特長として音質が最高クオリティであることが挙げられます。

パワフルでありながら、ヒステリックにならないディストーションサウンドからして凄い!自然に美しく伸びるシンバルや、スネアの音も恐ろしいほど生々しいです。ましてや空間表現の素晴らしさは群を抜いており、広い音場を生かして縦横無尽に音が迫ってくる。PANの振り方ひとつとっても匠の技です。それに各パートの音の分解能が素晴らしい。これほど音質の良いメタル作品には、滅多に出会えません。

この作品とフィーリングの似た「Fire Works」が、音質面で完全に大コケしてしまったのとは正反対です。あの作品は「オールドのギターや機材で、モダンなメタルサウンドを…」と意気込んだのが空回りしたのか、ギターサウンドが酷く目詰まりしている上に、音圧が上がると全体の分解能まで著しく低下するという悪循環。いっそのことギターパートの再録とリマスターをした上で、再販してくれないかなぁ…。



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