ブルガリのイザベラ・ロッセリーニはタダモノじゃない!




レディースのバッグって、バリエーションが豊富ですよね。エルメスのバーキンやケリーは色々な意味で別格としても、モラビトのトラヴィアータはそのエルメスも及ばないほどエレガントだし、デルボーのブリヨンは普遍的な雰囲気があるし、ヴィトンのボエシはギャザリングがゴージャスだし、ロエベのアマソナは無骨に見えて格調の高い作りだし、セリーヌのトラペーズはシルエットや色使いが面白い。デザインの雛形が似たり寄ったりになりがちなメンズ用品からすると、羨ましい限りの幅広さです。

もちろんメンズのシンプルさにも美点はありますが、単純に目で見て楽しむならレディースがいいですね。僕は男なので自分でレディース用品を使うわけではありませんが、婦人用バッグの百花繚乱ぶりは見ているだけでウキウキします。あのデザインは凄いな、とか、コイツはキテるな、とか、色々と楽しめるわけですから。メンズよりもカラーとデザインの選択肢が圧倒的に多いぶん、ちょっと目移りしちゃいますね。いったいどれだけのパターンの幅があるのか、見当もつきません。

その中でも僕が超絶的に惚れ込んでしまったのが、ブルガリのイザベラ・ロッセリーニなんです。イザベラ・ロッセリーニと聞いてピンとくる人はあまりいないかもしれませんが、ランコムの化粧品のモデルを長らくやっていた女優さん…といえばなんとなく馴染み深いですかね。ちなみに現在のランコムはイザベラの娘のエレットラがモデルをしており、これまた凄い美人です。イザベラの母であるイングリッド・バーグマンは20世紀を代表する大女優だし、親子3代にわたって素晴らしい血筋ですね。

そんなイザベラは長年にわたってブルガリの顧客だそうで、そのパートナーシップの証として作られたスペシャルバッグがこちら。いや〜ハッキリ言って、メチャクチャ格好いいバッグですね。レディースに「格好いい」というのは少し乱暴な言い方かもしれませんが、それ以外に形容しようがないくらいの格好よさ。今から2年半くらい前(たしか2010年の夏頃だったかな?)に発表されて以来、僕の脳裏に焼きついて離れません。もし僕が女性に生まれていれば、絶対にこのバッグを手にしてましたよ。


 
天然石を贅沢に使用したツイストロックと、七宝焼きを駆使したエナメルクロージャーが最大のハイライト。天然石の種類は、バッグのカラーや素材によってチョイスが異なります。


 
銀面のキメ細かさが一目瞭然。レザー自体がきわめて高品質で、見た目にも大変に美しいものです。宝飾ブランドといえども、皮革製品のクオリティにも妥協しません。


まずそのフォルムが素晴らしい。クラシカルスタイルのお手本ともいうべきデザインだから、かなり年齢を重ねても愛用できそう。流行が終わった途端に廃れてしまうものとは別物です。上下の2段構えで、素材や質感の対比が楽しめるのもいい感じ。それに一見しただけではどこのブランド品かが判別できないところも心憎いですね。僕はヴィトンのモノグラムのような「アピール力」を前面に出した製品も直球勝負で魅力的だと思いますが、ロッセリーニのような変化球もヒネりが利いていて面白いと思います。

それになんといっても、ツイストロックが凄くいい!これ、天然の半貴石なんですよ。画像のものはクリスタルの一種が使用されていますが、モデルによってアベンチュリン、アメジスト、ブラックオニキス、翡翠などのチョイスが変わる。欲を言えば自分で石の種類を指定できると嬉しいのですが、デザイナーがカラーや素材との相性を考慮して選んだ結果だそうなので、これはこれで良しとして納得してあげてください。唯一、200万円台でアリゲーターモデルをオーダーするときのみ、石の種類を指定できます。

さらに面白いのが、ツイストロックの下にくるクロージャーの部分。普通、こういうところはただの金属が使われるじゃないですか。でもイザベラ・ロッセリーニはありきたりな素材では終わりません。なんと七宝焼きを駆使する凝りようで、一般的な素材とはひと味違う光沢と色彩を湛えています。具体的にはクリスタルや鉱物の粉末を水などで溶いたものを、金属製の土台に設けた枠に流し込んでから高熱で焼きつける技法…つまり有線七宝ですね。この芸の細やかさが、男の僕さえも惹きつける要因です。


 
 イザベラ・ロッセリーニは、素材や仕立てのバリエーションが豊富。画像のタイプはミシンと手縫いを絶妙に組み合わせることで、手の込んだリボン模様を形成しています。


 
表層が消えるまで磨き込まれたコバ。見た目の美しさや、耐久性を高めることにも手抜かりありません。こうした細やかな仕事の有無に、物づくりへの姿勢が表れるわけです。


あとはそうそう、クオリティーの良さも忘れてはいけません。「えっ?所詮はジュエリーブランドなんだから、バッグの品質は良くないんじゃないの?」と呟いたそこのあ・な・た。ブルガリのレザー製品をナメちゃいけません(笑)。元々ブルガリは皮革製品にも力を入れていましたが、ここ数年のものはさらにクオリティーに気合いが入っているんです。レザー自体の質、縫製、コバなどの耐久性に関わる部分の処理、使っている金具の質感まで手抜かりありません。いい仕事をしてますよ。

つまりデザイン、ディテール、クオリティーの三拍子が揃っている。それに加えて流行とは無関係なスタイルですからね。長く愛用するための要素を完璧に満たしているわけです。レディースのバッグはデザインのバリエーションが膨大にある反面、長年にわたって愛用できるものを探し出すのは難しいと思うんですよ。あまりオーソドックスなものを選ぶと平凡で没個性的になる可能性があるし、奇抜なものだと飽きやすい。その塩梅(あんばい)を山のような種類の中から見極めるのは、難問だな〜と思います。

その点、イザベラ・ロッセリーニはバランスがすこぶるいいですね。基本的には古典スタイルを貫いたスタンダードなフォルムだし、それでいながら天然石と七宝焼きのコンビネーションで強烈に個性を主張していますからね。飽きのこない普遍的な魅力の中に色気もムンムン。タダ者じゃないオーラを放っているわけです。イザベラ・ロッセリーニさん本人も日本でいう還暦を迎えたわけで、40代以降の女性が熟年になるまで長く大切に使うのにジャストフィットすると思いますよ。

さらに嬉しい点としては、他人とほとんど被らないことですね。僕は女性のバッグをじぃ〜っと凝視して観察しちゃうタチですが、それでも街中でほとんど見かけたことがない。巷でイザベラ・ロッセリーニのバッグと遭遇したのは、これまでにたったの3回だけです。そもそもブルガリのバッグと遭遇すること自体が珍しいことですが、その中でもロッセリーニは本当に激レア。皆と同じバッグは持ちたくない、でも、無名すぎるものはちょっと…という貴女に、ジャストフィットすること請け合いです。


 
ライニングの柄は、意外にもポップなカタツムリ。イザベラさん自身がメガホンを取り主演も務めた「グリーン・ポルノ」からインスピレーションを得た模様です。


 
専用のブックレットまで制作するほどの気合いの入れよう。このシリーズに掲げられたコンセプトと、イザベラさん本人をモデルとした美しいフォトグラフの数々が綴られています。

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