スイスのHIRZLは仮想ビンディング・グローブ!?


 
 左が夏用の「TOUR-SF」で、右が初冬用の「TOUR-FF」。手のひらにある切れ目の数を除けば、基本構造は同じ。


こんなサイクル用のグローブは、ちょっと他にないですよ。グリップ力、フィット性、質感のすべてが特上。つい最近、日本に上陸したばかりのブランド「HIRZL/ハーツェル」のグローブです。サイクルウェアの最高峰・ASSOS(アソス)を擁するスイスから、またまた素晴らしいブランドが出てきました。特にグレイツなのがグリップ力。これは「滑りにくい」どころの騒ぎではありません。雨が降ろうと、槍が降ろうと、まったく滑らない。ありきたりな表現で申し訳ないですが、手とハンドルが一体化したような感覚です。

そのおかげでハンドルを握る…という意識が減り、肩や腕が力まなくなる。特に坂道でのダンシングや、ハンドルを引きつけながら漕いでいるときのメリットは小さくないですよ。僕のようなヘタレはつい腕に力が入ってしまいがちですが、そこでリラックスできるのだから万々歳!余計な力や神経を使わないようにしてくれます。こりゃ〜ビンディング・ペダルならぬ、仮想ビンディング・グローブ!?自転車とライダーはハンドル/ペダル/おしりでしか接していないので、この比類なきグリップ力は戦力に成り得ます。

それにこのHIRZLは、カンガルー革のレザーグローブ。手にしっとりと吸い付くような一体感は、繊維素材のグローブではなかなか味わえません。…といっても、単純なオールレザーではないんです。指のサイド部分と、その曲げ伸ばしに関わる部分は繊維素材。つまりハイブリッドってやつですね。汗を素早く放出する快適性と、シフトチェンジやブレーキングの操作性を損ねない動きやすさを両立。手のひらに2つの切れ目が入っているのが(夏用グローブは1つだけ)、じつにナイスなアイデアだと思います。


 


 


さらに褒めちぎりたくなるのが装着感。レザーグローブなのに、フンワリと柔らかくて気持ちいいんですよ。レザー製のサイクル用グローブの中でも、この柔らかさはトップクラスではないでしょうか。たとえば日本のブランド「intro」のレザーグローブが固くて張りが強いのに対し、HIRZLは驚異的ともいえるほどのソフトタッチが自慢。グローブの固さや使用感には人それぞれの好みがありますが、僕は無条件でHIRZLを推します。この柔らかさと心地よさを知って以来、他の選択肢はあまり考えられません。

もちろん質感のほうも手抜かりありません。丁寧に作られているので、チープさは微塵もないですよ。「GRIPPP」と大きく入ったデザインが賛否の分かれるところですが、まぁそれは目を瞑ってやってください。でも黒地に白い大きなロゴ、そしてさりげなく赤色が使われているグラフィックは、どこぞのカーボンホイールに似てますね。カンパのBORA-ULTRAや、イーストンの旧カラーのEC90を彷彿とさせます。そう考えると、これはこれでありかな〜なんて納得しちゃってます。

唯一、残念なのは、真冬用の防寒グローブがラインナップされていないこと。現時点では初冬用の「GRIPPP TOUR FF」と、夏用の指きりタイプ「GRIPPP TOUR SF」だけの展開です。ここはぜひともHIRZLの独創的なアイデアで、理想的な防寒グローブを製作してほしいところ。最高に暖かく、滑らず、手にしっとりと馴染む…そんな都合の良いグローブが生まれても不思議ではありません。ASSOSのアーリー・ウィンター・グローブや、doesnotmanufactを凌ぐ逸品を、ぜひとも期待しています。



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