Tony Macalpine「Premonition」


 


トニー・マカパインの最高傑作といえば、おそらく初期の2作品を推す声が多数派ではないでしょうか。イングヴェイを超える速弾きギタリスト…という触れ込みでデビューした当時のトニーは、まさにネオクラの権化。特に2ndアルバムの「Maxmum Security」は、ギタープレイの質と楽曲のインパクトがぶっちぎり!その分野での歴史的名盤との誉れ高き作品です。

もちろん僕はこの2作品が大好きだし、ネオクラしているトニーは凄く魅力的だと思います。でも僕にとって、彼のもうひとつの魅力はフュージョン風味のトニーなんです。軽快でハードなドライビングサウンドに、確かな技巧に裏打ちされた高速パッセージが駆け抜ける様は圧巻。テクニカルギター系パワーフュージョン…と呼べるスタイルも、彼の真骨頂だと思うんですよ。

そういう意味でイチオシなのが6作目のソロアルバム「Premonition」。爽快なフュージョンテイストに、彼本来のネオクラプレイが随所に顔を出してくるのだからたまりません。パワーフュージョン的なスタイルを確立させたアルバム「Freedom to Fly」の雰囲気に、初期2作品の勢いとエッセンスを融合させた「100%トニー・マカパイン」と呼べる作品だからです。

まずお得意のピアノでショパンの「前奏曲第18番ヘ単調op.28-18」を披露する@に続き、真のオープニングナンバーであるAがいきなりの名曲。切なげなフレージングを、キャッチーに聴かせるセンスはさすがの一言。中間部の直前のスウィープアルペジオはただひたすらに美しく、エレクトリックギターの音色ながら「The Violin Song」というタイトルがしっくりきてしまうほどです。

そのアルペジオに続いてイェンス・ヨハンソンとのソロバトルが開戦。イェンスのキーボードプレイに触発されたのか、トニーのネオクラ魂が早くもスイッチON。ファンの期待に応える高速バトルが中間部だけで1分13秒も炸裂し、さらに終盤では再び1分39秒にわたるバトルのままフェードアウトするという出血大サービス。序盤から壮絶な展開が繰り広げられていきます。

続くBはオープニングに続く曲にぴったりなミドルテンポ。ややシャッフル気味なリズムに乗って、バッキングとソロのパートが絶妙に絡んできます。フレーズ自体に艶があるというか、ギターを表情豊かに歌わせるところは本当に素晴らしいですね。派手な速弾きに頼らずともビシッと聴かせることができる、まさに熟練の技が冴え渡るナンバーです。

そんなエモーショナルな曲の余韻に浸る間もなく、メチャクチャ格好いいナンバーのCに突入。一発でアタマに残るキャッチーさと、グルーブ感あふれるリズムが最高ですよ。そこにもってきてトニーときたら、テクニカルなプレイがてんこ盛りだもんな〜。このアルバムでも1・2を争うゴキゲンなナンバーに仕上がっております。聴き込むまでもなく名曲でしょう。

そしてDの「Rusalka」は、ドヴォルザークのオペラ曲へのオマージュですかね。精霊ルサルカの悲哀を描いた原曲の世界観を意識したのか、序盤から悲壮感の漂う曲調になっています。Bの「Ghost of Versailles」もそうでしたが、スーパーテクニックだけがトニーじゃない…という部分を改めて痛感させるナンバーですね。その情感的なプレイが存分に堪能できます。
 ここでピアノソロの小曲Eを挟み、大爆発キターーーーーーーーーーーーーーーなFに突入。F1やサッカーのダイジェスト番組に、ぜひとも挿入曲として使っていただきたいですね。2ndアルバムに収録された「Hundreds of Thousands」の再来ともいえるハジケっぷりで、とにかくひたすら弾く・弾く・弾く!トニーの歴代ナンバーの中で、3指に入るスピード違反っぷりです。

その凄まじい弾きっぷりで放心状態にさせられたところに、ブルージーでスローテンポのGがいいですね〜。あのまま弾きまくりが延々と続いたら、メッチャ疲れるところでしたよ。まぁギター小僧的には、それはそれで大歓迎でしたけど(笑)。この曲は5作目のアルバム「Madness」に入っていそうな雰囲気で、キャッチーではないけどトニーの多彩ぶりが随所に見られますね。

このブルージーなナンバーに続くHは、BDと同じくミドルテンポのナンバー。やや黄昏たフィーリングのフレージングは、トニーの得意分野ともいえる部分ではないでしょうか。彼の「歌うギター」がよく映えてますね。前々曲のFがあまりにも派手だったので、やや地味な曲が続く印象を受けますが、中間部では「これぞトニー」なパッセージが炸裂するのでご心配なく。

いよいよアルバムも終盤戦。この作品の中でもっとも摩訶不思議というか、非常に起伏に富んだナンバーがIです。曲の展開がドラマチックで、ちょっとジャジーな雰囲気で、都会的なセンスに彩られ、随所にスーパーテクニックが炸裂し、イェンス・ヨハンソンも顔を出す。お世辞にもキャッチーな曲とはいえませんが、聴き込むほどに魅力が増すスルメナンバーです。

ここでまたまたピアノ曲のJで仕切り直し。この手のナンバーが同一アルバムに3曲もくるのは、彼のアルバムにしては珍しいですね。続くKは一聴しただけではなかなか魅力が伝わらないというか、ちょっとインパクトに欠けてしまう曲ですね。最後まで淡々とした展開で起伏が少ないし、アルバムの終盤で聴き手のアタマが疲労していることもあり、BGMのように聴こえてしまうかもしれません。随所にトニーの「らしさ」は感じるのですが…。

しかしこのパッとしない雰囲気も、ラストナンバーのLが見事に払拭してくれます。近年の路線に通じるヘヴィーなリフから、キャッチーでメロディアスなフレージングが展開していく冒頭からインパクトが強いですね。ソロプレイもしっかりと練り込まれたドラマチックなもので、バッキングといいメロディーといい申し分ありません。その曲の名も「Winter in Osaka」。この曲だけ聴いていると、大阪ってメッチャ格好いい街だなぁ〜!来日した彼にインスピレーションを与えるほど刺激的だったのでしょうかね。こんなにカッチョよく大阪を表現している曲は、なかなかないと思いますよ。もし僕が大阪府民の立場だったら、トニーに感謝感激です。

…以上、全13曲の「Premonition」をぜひとも聴いてやってください。トニーにネオクラだけを期待している方にとっては少しとっつきにくいかもしれませんが、ネオクラだけに留まらない彼の魅力を再発見していただけたら幸いです。トニー・フランクリン(b)とディーン・カストロノヴォ(ds)による強力な布陣もウリなので、リズム隊の実力にも注目してあげてくださいね。


◇特上お勧め曲:ACF   ◇お勧め曲:DIL


本作からのライヴ映像はこちらをクリック
Aの「The Violin Song」から。原曲のクオリティーからすると、出来はちょっとビミョーです。トニー、モタモタと弾きすぎだよ〜!なんでもないところで凡ミスしちゃってるし。中間部のスウィープアルペジオは女性ギタリストのNili Brosh(ニーリ・ブロッシュと読むのかな?)が見事に弾き切ってますね。ユニゾン部分も独自のアドリブで弾き倒しています。それにしてもこの映像、カメラワークがけしからんですね。せっかく美形のNiliが一生懸命にギターソロを弾いているのに、なぜそこでベーシストを映すのだ(怒)

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